第3章まででは飛行場所のドローン規制について取り上げましたが、航空法によるドローン規制は飛行場所についてだけではありません。
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。ただし、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、第五号から第十号までに掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の承認を受けたときは、その承認を受けたところに従い、これを飛行させることができる。(航空法第132条の2)
どの様な形態でドローンを飛行させるのか?
時間帯はいつなのか?
機体の監視体制は?
2019年9月18日には改正航空法が施行され、ドローンに関係する条文も変更が加えられました。
縛られないと動かないし動けない。
過剰に管理したがる政府と管理されたがる国民。
今回の航空法改正は、そんな国民性の結果としか思えないので、空撮屋としてはあまりいい様に捉えていません。それなりの責任が課せられても自由な方が絶対にいいと思うんですがね。
保守的な人が多いと、どうしてもこうなりがち。
第4章では、2019年に新たに追加された飛行の方法の規制について解説します。
飲酒運転が禁止になった
飛行前の点検やフライトコンディションのチェックが義務化
他の航空機や無人航空機との接触回避義務を負う
他者への迷惑行為の禁止
結局のところ…
今回のお題目はこちらの5つ。
1. 飲酒運転が禁止になった
一 アルコール又は薬物の影響により当該無人航空機の正常な飛行ができないおそれがある間において飛行させないこと。(航空法第132条の2 第1号)
人それぞれ個人差があるので、一率っていうのはどうかと思うのですが、「アルコールや薬物の影響下にある状態に置いて、無人航空機を操縦する事を禁止すると言うもの。
仕事の空撮で酒を飲みながら…と言う奴はいないにしても、レクリエーションの場合どうなんだと。
罰則規定が書かれている航空法第157条の4では、第百三十二条の二第一号の規定に違反して、道路、公園、広場その他の公共の場所の上空において無人航空機を飛行させた者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
なので、定義は曖昧ですが、誰もいない何もない場所であればOKと言う事です。
別に取り締まられても、何とでも言えちゃいますのでこう言う解釈してます。
そもそも、アルコールや薬物の影響下でなくても危ないドローンユーザーはたくさんいるので、それ以前の問題かも。
ちなみに、薬物についても、摂取している薬物が違法か合法かは問われません。
2. 飛行前の点検やフライトコンディションのチェックが義務化
二 国土交通省令で定めるところにより、当該無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整つていることを確認した後において飛行させること。(航空法第132条の2 第2号)
飛行前チェックが法律で義務化されたことに一番、びっくりしたのですが。
空飛ぶ機械をあなたは飛ばそうとしてるんですよ、しかも無線操縦で。
それなのに、機体の状態や今後の気象変化、飛行経路や範囲の確認をしないんですか?
まぁ、確認が不十分な人があまりにも多いから、機体の性能が上がっても事故は減らないんでしょうけど。
機体のチェックなんかは、使う機体ごとに見るべきポイントが違うので、それぞれに合ったチェックポイントを確認する様にしましょう。
法規制で「点検や周辺環境確認をしなさい」と書かれないといけない程低レベルなドローン業界には残念ですが。逆の見方をすると、機体の整備や確認を怠ったことによって発生した、事故を起こしたオペレーターを航空法違反で検挙できるということ。国関係の事業の人たち、フライアウェイやら墜落やら、しょっちゅうニュースで見ますけど、この場合のオペレーターをちゃんと検挙してるのかな?
それなのに、現存製品の中で最も信頼性の高いDJI製品を排除しちゃって。。。
場合によっては、点検不足や周辺環境の確認不足ならまだしも、機器の不良の可能性も大いにあるのに。
環境予測についても、気象予報ができるくらいの気象予測能力が本当は必要なんですけど、それも無い人がほとんどなんで、この規定で検挙される、本当は多いのではないでしょうか。
3. 他の航空機や無人航空機との接触回避義務を負う
三 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するため、無人航空機をその周囲の状況に応じ地上に降下させることその他の国土交通省令で定める方法により飛行させること。(航空法第132条の2 第3号)
ここで⾔う衝突予防とは、他の航空機との衝突を未然に防ぐことを⽬的としています。航空機の往来を妨害し、危険を及ぼした場合は刑法で処罰されますが、それを未然に防ぎましょうと⾔うことです。他の航空機の接近を察知したら、当該機がどこに向かって⾶ぼうとしているのかを確認し、接近の恐れがある場合は回避⾏動を取るようにしましょう。
公共性を謳われている航空機の飛行が、最も優先される。
ドローンを扱う上で常識的無ことなので、法律に載ったところで何ら問題は無いはずですが、この規定には無⼈航空機同⼠の衝突回避も含まれており、操縦者間で⾶⾏のタイミングや⾶⾏経路について調整を⾏いながら⾶⾏させることが求められています。⾶⾏中の無⼈航空機のみ確認できていて操縦者が⾒当たらない時は、必要に応じて⾶⾏の延期や経路の変更などの対処が必要です。
無人航空機同士の接触の場合は、航空機との接触や異常接近の様に、刑法による訴追はありませんが、両機の操縦者に非があるとして両者共に処罰することも可能な条文の内容です。
ドローンの場合は、BVLOSで飛ばしていると見えている範囲が極端に限られているので、「見えた方が回避行動を取る」がベストだと思います。
4. 他者への迷惑行為の禁止
四 飛行上の必要がないのに高調音を発し、又は急降下し、その他他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと。(航空法第132条の2 第4号)
不必要は低空の高速飛行や急上昇急降下など、他人に迷惑を及ぼす様な飛び方をしてはいけないと言うことです。
最近のドローンは上昇下降速度が制限されていて、アグレッシブな飛び方ができない物がほとんどですが、低空の高速飛行は難なく行えます。レース用のドローンなどは自ずと超高速飛行や急の付く動作が行える様に構成されているので、レースの練習をしようと思った時などは特に注意が必要です。
どちらにしろ、他人に迷惑かけてはいけないと言うことですが、これが拡大解釈される恐れがあるのも考えものです。
5. 結局のところ…
結局のところ、今回取り上げた航空法第132条の2 第1号から第4号までに書かれている内容は、リテラシーをちゃんと持っているドローンユーザーであれば、知ってて同然守ってて同然の内容です。
それが法律に書かれてしまったと言うことは、趣味や事業者も含めた日本のドローン業界とは「最低限の事も規定しないとしない・できない」レベルだと言う事です。
昔からR/Cヘリを含めてドローンに携わってきた人にとっては迷惑千万です。
筆者プロフィール
藤永優 【ドローングラファー】
専門:舶上空撮、ドローン法規
映像制作からダムや橋梁などのインフラ保守まで、自動操縦では真似のできない攻めの姿勢のフライトかつ、要望された映像は、法に触れないギリギリラインまで突き詰め形にするのが信条。
空撮のご依頼や各種ご相談はこちらより承ります。
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