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ドローン法規制|第5章 夜間飛行の禁止と対策

更新日:2020年1月24日

第5章からは、ドローンの飛行方法の規制の内、2015年12月10日に追加された飛行の方法に関する規定を取り上げます。


今回は、ドローンの夜間飛行について。

夜間のドローン飛行は危険か否か。こういう議論はあるのかないのか、はたまた何も考えていないのか。


意外と、みんな何も考えてないと思います。


夜間だからという先入観だけで、ドローンの夜間飛行は規制すべき。

その安易な考えから、夜間飛行の制限がかけられているとすら思っています。


昼間の時間帯において飛行させる

日出から日没までの間において飛行させること。(航空法第132条の2 第5号)


ドローンを飛ばす時間帯は昼間に限る!

法律に書いてある内容はこの1言。

日の出日の入りは、以下のように定義されています。

要するに、視地平線から太陽が顔を出した瞬間が「日の出」

太陽が完全に視地平線より下に隠れてしまった瞬間が「日の入り・日没」となります。


日の出日の入りの時刻は地域差がある

実際には、山があったり雲が掛かっていたりすると、視地平線に太陽が沈む瞬間や顔を出す時間と実際に太陽が見え出す時間、見えなくなる時間にラグが出てきます。これを防ぐために、国立天文台では各地域で視地平線から太陽が顔を出す時間と完全に沈み切る時間を計算し、公開しています。

ドローンの飛行における、日の出・日の入りの時間はこの国立天文台が発表する日の出・日の入りの時刻が対象になります。よって、地域によって時差があります。東に行けばより早めの時間帯、西に行けばより遅めの時間帯にズレが生じます。

国立天文台が発表する、日の出から日没までの間にドローンを飛ばしている分には、この法律は気にする必要はありませんが、夕景の撮影は気が付いたら今は「夜間」なんてこともあります。


夜間飛行の承認飛行形態を遵守しなければならない

だったら、夜間飛行に関する国土交通省の承認得ていればOKだろ。

と言うわけにもいきません。

基本的に夜間飛行の承認を得るためには、昼間より厳格な第三者排除対策を含めた安全確保策が必要で、日没を過ぎるとその安全対策が突然必要になると言うわけで…

上の表の大阪で考えると、18:10:51までは、昼間の枠組みで飛んでいても何ら問題ありません、一定距離さえ保っていれば第三者の接近にもそこまで神経質になる必要もありませんが、18:10:52になった時点で、飛行高度に相当する水平距離の第三者排除エリアを構築しないと承認外飛行となるので、「違法」だと言うことになります。

これ、私が検察官なら航空法違反で立件して有罪にする自信があります。裁判所の検察忖度が無くてもね。

手っ取り早いのは、今日の日の出日の入りをGoogleで検索して、その間で余裕を持って飛ばせばOK。

太陽が見えていれば、とりあえずは昼間と解釈できます。


夜間はビジョン系の操縦サポート機能が使用不能に

夜間飛行で気をつけるべき点は、VPSを一とした光学センサー類が全く使えなくなること。

一昔前のドローンみたいに、GPS/GLONASSの測位だけで位置補正をしているので、自律ホバリングの精度はかなり落ちます。

そして、カメラEVの知識を持っておかないと、ライブビューが暗すぎて周りが見えなかったり、反対に露出を上げすぎて、画像がノイズだらけとか。

まぁ、いろんなことがあります。


夜間飛行の承認を得るにはまず機体の装備

夜間飛行は航空法で禁止されている飛行方法なので、実施するには国土交通大臣の承認が必要です。

承認を得るためには、夜間飛行の訓練経験は個別に積んでもらうとして、機体の性能が問われます。

夜間⾶⾏は、機体に搭載された灯⽕を頼りに⾶⾏させます。

よって、灯⽕を有しない機体での夜間⾶⾏は、常時照明器具により機体とその周辺が照射されている環境を講じない限り承認を得ることはできません。

操縦者も、暗所で機体に搭載された灯⽕を基に、機体の向いている⽅向を読み取り、適切な操作ができる必要があります。


2020年1⽉時点で、コンシューマードローンとして販売されている機種のほとんどで、4灯灯⽕が採⽤されており、機⾸側に⾚⾊点灯の2灯、機尾側には原則緑⾊点滅の2灯(⼀部機種では1灯)の組み合わせです。機尾に搭載されたライトはシグナルアラートも兼ねており、エラーが発⽣した場合、灯⽕の⾊と点滅⽅法で操縦者に異常を知らせます。

同じ4灯灯⽕が採⽤されている機種でもライトの取り付けられ⽅は異なり、⾶⾏させている機体の灯⽕の⾒え⽅の特性を熟知し、それに基づいた操作をする必要があります。


飛行経路及び飛行範囲の立ち入り制限

夜間⾶⾏を⾏う際は、想定される⾶⾏⾼度と同じ距離を、機体を中⼼とした同⼼円の範囲に第三者が⽴ち⼊らない環境を作る必要があります。

右上図の様に、想定される⾶⾏⾼度が50m の場合、機体位置を中⼼として半径50m を安全圏として確保しなければいけません。この範囲規定に⼀切の根拠はありません。状況に合わせて⽴ち⼊り禁⽌区域の調整が必要になります。

なお、機体が移動する場合は、想定される⾶⾏区域全体に⾶⾏⾼度と同距離の範囲を加えた、第三者の進⼊規制を⾏なった環境(右下図)を構築する必要があります。


人口集中地区内での夜間飛行

航空局が出す夜間⾶⾏の承認は、⼈⼝集中地区以外の場所での⾶⾏を前提にしています。この事は、⾶⾏許可・承認申請の審査基準や航空局基準マニュアルに記載されています。

灯⽕の標準装備、機体性能やライブビュー伝送品質の向上、機載カメラの⾼感度対応などにより、実際の⾶⾏においては昼間と遜⾊ない程に操縦性は向上しました。反対に暗所であるが故に、機体の灯⽕が⾒つけやすいというメリットすらあるほどです。

⼈⼝集中地区内での夜間⾶⾏の禁⽌は、⾶⾏の安全性よりも、夜間に無⼈航空機が街中を⾶⾏することによる住⺠⽣活への影響を考慮しての措置として、旧来の規制が⽣きていると考えられます。

2019年6⽉以降、⼈⼝集中地区内での夜間⾶⾏は、フライト毎の個別承認申請扱いとなりました。よって、包括の⾶⾏許可では⼈⼝集中地区内での夜間⾶⾏を⾏えません。


業務上実施せざるを得ない場合は、⾶⾏範囲や経路を予め特定し、追加の安全対策を講じて個別の承認が必要です。


 

筆者プロフィール

藤永優 【ドローングラファー】

専門:舶上空撮、ドローン法規

映像制作からダムや橋梁などのインフラ保守まで、自動操縦では真似のできない攻めの姿勢のフライトかつ、要望された映像は、法に触れないギリギリラインまで突き詰め形にするのが信条。

 

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